私のメールマガジン「天下泰平記」で朝青龍問題は ”横綱の品格”と
題して2週続けて書いたので、この話はしばらくいいかなと思って
いました。しかし、目に余るものに対しては書くしかありません。

朝青龍の出場停止に関する話を続けてましたので、今日は若手力士の話を
しましょう。

先場所の朝青龍と白鵬の一番、両回しを引き付けた朝青龍が低い体勢で
圧倒しました。この相撲を見ていて私は旭富士(現安治川親方)と
安芸乃島(現千田川親方)の取組を思い出しました。

”津軽なまこ”と呼ばれた旭富士は189センチ、143キロとバランスの
取れた柔軟な体を持ち、前さばき良く、出し投げなど巧さも抜群、本当
に負けにくい力士でした。柔軟で恵まれた体は白鵬と共通しています。

安芸乃島は174センチ、155キロ。低い重心と引き付けの強さが特徴
でした。大関時代の旭富士が5場所連続で優勝同点・準優勝を続けても、
横綱になれなかったことがありました。このとき5場所で4度、安芸乃島
に敗れています。12・12・14・13・13勝のうちで4敗している
のですから相当なものです。

今、安芸乃島タイプの力士がいれば、白鵬は苦手にしていたでしょう。
低い重心で回しを引けば四つ身が巧いタイプ、そこで期待するのが豪栄道
です。善戦健闘ではなく、本当に朝青龍・白鵬に肉迫するのは、がっぷり
四つに強い力士でしょう。

秋場所新入幕の豪栄道ですが、とにかく目先の1勝にとらわれないで自分
の相撲を取ってもらいたいと思います。頭を付けるような小さい相撲では
なく、がっぷりから吊り寄りで攻めることが出来る力士を理想に、すぐに
出来なくとも理想を大きく持って、大きな相撲を取って欲しいですね。

朝青龍を最初に見たとき、玉の海に少し似た体型をしていると思いました。
大横綱への道半ば、27歳の若さで夭折した玉の海。その美しいまでの
本格派四つ相撲を、朝青龍が見せてくれるのでは、と期待したものです。

朝青龍は持ち前の運動神経を生かした、朝青龍独特の相撲を確立しました。
しかし、玉の海ほどの足腰の柔らかさ、粘り強さは朝青龍にはありません
でした。玉の海が身長で15センチ、体重で50キロ上回る巨漢の高見山
をまさに目よりも高く吊り上げたシーン、その美しさは私の45年ほどの
大相撲観戦の中でも最高のハイライトのひとつです。

相撲の美しさの極致とでも言えそうな玉の海の吊り出しと対照的な、過剰
なまでの闘志を見せ付けられる朝青龍の吊り落とし。
似ていると感じたのも、はるか昔のことに思えます。

そして今、毎週火曜日に配信しているメールマガジン「天下泰平記」で
横綱の品格と題して原稿を書いてますが、横綱の責任感の部分で朝青龍と
玉の海を再度、比較する内容になってしまいました。

何事も ”昔は良かった”とは言いません。
しかし守られるべき大相撲の大切なもののひとつは ”相撲の美しさ”だ
と思われる今日この頃です。

朝青龍の説得にあたる高砂親方の姿がテレビなどで度々登場しています。
朝青龍の出場停止に関しては様々な切り口で語られるでしょうが、やはり
まず最初に考えさせられるのが親方と弟子の関係です。

高砂親方は言わずと知れた”ダイちゃん”の愛称で親しまれた元大関朝潮
です。今から20数年前、当時としては珍しかった実在のスポーツ選手を
題材にした四コマ漫画の主人公にもなっていますが、これがまたメジャー
な漫画だったため強い印象を残しています。もちろん実際の朝潮に漫画の
主人公に重なるイメージがあったのも確かですが。

いつも明るいダイちゃんは8勝7敗の成績もどこ吹く風の能天気ぶり、
考えていることはアフターシックスのことばかり。
結局は先々代の高砂親方に呆れられ、果てはポカリとやられてしまうという
ストーリー。元横綱朝潮の先々代は濃い顔立ちに頑固そうな表情、対照的に
まったく緊張感のないダイちゃん。

さて現実の高砂親方は親方としての有り方を示してくれるのか、四コマ漫画
のようなオチにならないよう祈っています。

朝青龍の二場所出場停止処分については、私のメールマガジンで
”横綱の品格”と題してコラムを書きましたが、今回この”横綱の品格”の
テーマは大相撲の本質に関わるものだと改めて感じたしだいです。

当然のことながら、初めから品格が備わって横綱に推挙される力士はいない
でしょう。横綱に対して、その重責を担っていることへの畏敬の対象として
見られることによって、そして横綱はその期待に応えるための言動を積み
重ね、そこから品格というものが形成されていくものだと思います。

よくワイドショーなどで大相撲をよく理解していないキャスターやコメン
テイターが「まだ彼は20ウン歳の若者ですよ。一般社会では云々・・・」
といった的外れな切り口で朝青龍のことを語ることがあります。

しかし、どんなに長い大相撲観戦歴のある高名な文化人であったとしても
横綱は畏敬の対象であるべきだし、また横綱の方は横綱たる重責を常に
感じているべきであり、この双方が必要充分条件として成り立って初めて、
横綱の品格が現出されるのではないでしょうか。

この関係が朝青龍の横綱昇進後、果たしてきちんと機能していたのかに、
疑問を感じるところです。





「大相撲になりました」

テレビの大相撲中継でアナウンサーがこのフレーズを口に
することが減ってしまったような気がします。

大相撲が大相撲たりえるのは、熱戦を意味するところの
「大相撲」があってこその大相撲のはずです。

大相撲が「大相撲」と呼ぶにふさわしかった時代の感動の
記憶をブログに綴ります。


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